酪農ヘルパー事業制度の誕生

近年では、漫画家の荒川弘さん原作『銀の匙(小学館)』の人気が嚆矢となり、一般の方々の中にも酪農経営を興味を持たれ始めている感がありますが、そもそも酪農経営とは何か?
元来、酪農経営は乳牛を飼育し、牛乳を生産する事で成り立っています。生物相手の商売である上、毎日2回の搾乳作業は必須であり、『年牛無休365日が営業日』が酪農経営の最大特徴であり、他の自営産業とは明らかに違う点です。しかも、特殊産業であるにも関わらず、経営主体は、現在でも殆どが家族経営であり、働き手が限られていて、病気・事故、旅行・冠婚葬祭などの理由で休日を非常に採り辛いという経営問題を抱えています。数多くある問題の中で、これが一番の酪農経営の問題点であると思います。普通のサラリーマン職業などの他産業では週休2日が至極当然である現在に、酪農経営のみが定期的に休日もとれない状態では、誰も酪農経営に参入したくありません。つまり後継者が育たない。ということです。
 昔の酪農経営(というより日本の小集村落経営)は、各地村落の共同作業制度・『結(ゆい)』によって、近隣の人々同士の相互扶助によって、酪農産業の福利厚生は成り立っていましたが、酪農家戸数減少・乳牛飼育頭数規模が拡大していったので、結という相互扶助では、今日の酪農経営は難しくなってきました。

 

 限られた労働力の中での365日営業・近隣との相互扶助の結制度の衰退が重なり、更に厳しさが増す現状の中で、休日を計画的に採れ、経営にもゆとりを求める酪農家さんの要望から始まったのが『酪農ヘルパー事業制度』です。
 平成2年より、国の補助を得て都道府県ごとに事業基金が設けられ、酪農ヘルパーは全国的な組織化が進められました。これによって「社団法人酪農ヘルパー全国協会(以下、ヘルパー協会)」が設立されるに至りました。この協会が設立された事で、経費はかかりますが、専任ヘルパーを雇用し、酪農家が共同して計画的に作業を依頼できる事になりました。ヘルパー協会の出しているテキストに、酪農ヘルパー事業とヘルパーについての説明があるので、何点かを以下に抜粋させて頂きます。

 

@酪農ヘルパー事業とは酪農ヘルパーの出役を請負う事業のこと

 

A酪農ヘルパーとは:酪農家が休日を採りたい場合や酪農家に突発事故が発生した場合などに、酪農家に代わって飼育管理を代行する人。

 

 協会に所属する酪農ヘルパーが、酪農家の要請によって、協会から派遣される仕組みになっています。

 

酪農家の要請により、派遣された酪農ヘルパーの代行業務範囲は、ヘルパー協会が定めた以下の内容の利用規約によって定められています。

 

1.朝夕の搾乳および飼料給与
2.牛舎内の簡単に清掃
3.日常的な糞尿処理

 

上記の3つが基本的なヘルパー利用規約となっています。協会によっては乳牛の分娩介助などといった特殊な作業も受けていますが、主に飼料給餌・除糞作業、そして朝夕の搾乳作業を酪農家に代わって行うのが基本となっています。