珍しい馬の種類

 前回の記事(世界に250種類いる馬)では、サラブレッドやクォーターホースなどメジャーな馬の種類を紹介させて頂きましたが、今回はあまり世間で知られていない、マイナーな馬の種類の一部を紹介してゆきたいと思います。

 

@シェトランドポニー
 ポニー(pony)とは、体高(身長)141cm以下の小型馬であり、脚も他の馬に比べて短く太いのが特徴です。ポニーという言葉は、『小さなオスウマ』を意味するフランス語『Poulent・プルネ』が語源となります。
蹄も硬く強いので蹄鉄をつける事も滅多にない上に、脚の怪我をする事も非常に少ないです。この利点が生かされ、体格が小さいにも関わらず、生活面では、昔から2輪軽馬車(トラップ)を曳く馬として利用されたり、産業面では1600年代には炭鉱では石炭運搬車を曳く動力でも利用されました。更に戦争用軍馬としても大いに活躍し、特にスコットランド王・ロバート1世(1274〜1329)は、ポニー騎兵隊を用いて、1314年のバノックバーンの戦いでイギリス軍を撃破した記録も残っています。

 

 ポニーで最もメジャーなのが、シェトランドポニーです。

 

 原産国はイギリス・スコットランド北東沖・シェトランド諸島。余談ですが、牧羊犬で有名なシェトランド犬と同郷です。シェトランドポニーの特徴としては、スコットランドという北国の荒涼した土地の出身ですので、牧草少ない地域を生き延びてきたので粗食にも耐える上に、全身長く厚い毛に覆われ、尻尾の毛も悪天候に耐えれるように密生しています。特に冬期に至っては、毛皮が二重に生える仕組みなっており寒さ対策は万全となります。(そのかわり夏期の毛皮の生え変わりは遅いです)
 現在は小柄な体格が世界で好まれ、小型馬車用馬・子供乗用馬として利用されていますが、特に子供達がポニーを駆って行われるポニー競馬という愉快なイベントや、最近では更に小型化に改良され、盲導犬ならぬ『盲導ポニー』としても活躍しています。

 

Aオーストラリアン・ストックホース

 

 北アメリカ大陸では、カウボーイ達のクォーターホースが著名ですが、南国の大陸オーストラリア(豪国)ではストックホースという馬が有名であり、現在でもオーストラリア国内で最多の馬です。英国人最初の入植地であり、現在は大都市シドニーがあるニューサウスウェールズ州が原産地であるために、「ウェラー」とも呼ばれる事もあります。
 元来、豪国には馬はほとんどいませんでしたが、1700年代にサラブレッドとアラブ馬を交配させ誕生したのが、ストックホースの始祖となりますが、他にもクォーターホースの血統にも影響を受けていると言うわれています。ストックホースは、この様に世界各国の種類を交配させられて完成している雑種馬なので、現在でも馬の正式品種としては認可されていません。
 ストックホースの特徴としては、頭部はサラブレッドに比べて重くズングリとしており、身体や脚部は、なだからな肩と強靭な後肢を持っているので、長時間の乗馬に耐えれる体格になっています。この点は米国のクォーターホースの利点を受け継いでいると思います。
 ストックホースは、スピード力はサラブやクォーターホースに比べ見劣りしますが、スタミナ(持久力)に富んでいます。灼熱苛酷の豪国大陸の牧場作業には、古来よりストックホースは貴重な労力となっていますが、過去にはその強靭なスタミナが生かされて、第一次世界大戦では英国軍の騎馬として12万頭以上が採用されました。それをフルに活かしたのが、騎兵将軍・E・アレンビーという人物で、彼が中東・パレスチナでトルコ軍を長躯奇襲した折は、ストックホース騎兵部隊を組織し、約38℃の高温の中を4日間で274kmも走破し、作戦を成功に導いた事が記録に残っています。

 


(オーストラリアン・ストックホース)

 


(人が騎乗すると良くわかりますが、ストックホースは小柄ズングリ体型です)

 

B米国産アパルーサ

 

 米国産アパルーサは一時期絶滅の危機に瀕しましたが、現在では世界中で最も飼育されいる品種の1つとなっています。アパルーサの始祖はアメリカに持ち込まれた、斑点模様のアルダシアン種(スペイン原産)と言うわれています。ハリウッド映画等でインディアン(先住民族)が騎乗している斑点模様の馬が、このアパルーサになります。
 アパルーサという名前は、米国オレゴン州にあるパルース谷から由来します。1700年代に、その谷付近の先住民族・ネーパル族がアパルーサを好んで騎乗し、徐々に改良してゆきました。1877年に米国軍隊(白人)がネパール族領域に侵攻した折、ネパール族は追われましたが、この折にアパルーサも絶滅に近い状態になりました。
 アパルーサ最大の特徴は何と言っても、斑点模様です。主にレパード・マーブル・スノーフレークの3種斑点模様があります。また頭部は小さく、鼻孔から唇にかけて白と黒の斑点模様があります。米国西部の未開地で生き抜いてきたので、スタミナがあり牛追い用の馬、競走馬や障害飛越馬として、現在は利用されています。

 


(レパード模様のアパルーサ)

 


(鼻孔や唇の斑点模様)